静寂を待ちながら

お笑い、テレビ、ラジオ、読書

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高橋一生の本棚

2017年8月4日、NHKにて放送の「あさイチプレミアムトーク」、ゲストの高橋一生さんが、自宅の本棚を紹介。 あまりに魅力的かつ強烈だったので、一冊ずつ確認してみました。以下、30冊以上あります。 分かったものだけで恐縮ですが、どうぞお納めくださいませ…

叫ベマタヨシ(又吉直樹「火花」が試みた実験)

こんにちは。毎日寒いですね。こちらは相変わらずのしがない日々です。先日、Eテレ「オイコノミア」で、経済学者の大竹先生が、「又吉さん、今『火花』の売上はどれくらいか知っていますか…?」と電卓を叩き、ご本人とゲストの西加奈子さんに見せていました…

『本のbar(本のカフェ第23回番外編)@札幌』のご報告

こんばんは。もうすっかり秋ですね。あと3ヶ月で今年も終わります。何という…。さて、すっかり遅くなってしまいましたが、先日開催した「本のbar(本のカフェ第23回番外編)@札幌」のご報告を。 2015年9月19日、「本のBar」を開催いたしました。作家の木村…

小説と、なにか(販促としての小説)

こんばんは。めっきり秋ですね。天も地も、獰猛なこの頃です。大過ない日常の偉大さを思い知ります。 わたしは最近、公私ともにべらぼうにドタバタです。まあ、そんな中でも本を読んで音楽聴いて、「ゴッドタン」観ればだいたい復活できるので、根が単純なん…

又吉直樹とボイン(「火花」の美を支えるもの)

こんにちは。扇情的なタイトルですみません。わざとです。5月23日の『又吉直樹「火花」ブックトークイベント 於 くすみ書房2F「BookBird」』*1から早3か月。 その間に三島賞次点、「アメトーーク≪読書芸人≫」でお勧めした本がバカ売れ(中村文則「教団X」そ…

『とても個人的な谷川俊太郎展』『外山光男アニメーション展「夏なのに」』、そしてにっき。

こんばんわ。暑いですね。私は完全なる夏バテです。楽しそうなことに目を光らせつつも、体力が続かずに不義理をしてしまうこともしばしば。「筋肉が自慢の頼れる兄貴化計画」には程遠い、へなちょこっぷりが悲しいです。そんな中、何とかうかがえた素敵な展…

吉本隆明全集刊行によせて

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こんにちは。 本日は吉本隆明さんの命日です。あれからもう2年が経つのですね。あのときは本当に、自分でも驚くくらいに動揺した。ただのファンにすぎないのに。身内が亡くなったときみたいに、いやある意味ではそれ以上に辛かったです。彼の思想や発言をど…

〈原点〉その2 宮崎駿「風立ちぬ」〜〈旅路〉の果てに

前回の続きです。 これまで「アニメは子どものもの」と言い切り、作品を発表してきた宮崎駿さんですが、最新作「風立ちぬ」では全く違う切り口を提示されました。 堀越二郎は、宮崎駿さんそのものです。「己」を、ためらいながらも表出したのです。 「飛行機…

〈原点〉 その1 宮崎駿「風立ちぬ」〜カルチャーガジェット

宮崎駿監督の最新作「風立ちぬ」、見どころ満載で本当に面白かったです。ようやく感想がまとまったので書いてみます。いわゆる「ネタバレ」ありです。 ………… 「風立ちぬ」といえば、日本でいえば堀辰夫の小説を指しますが、この映画では、彼と同時代を生きた…

肯定の人・2〜いとうせいこう「想像ラジオ」

前回の続き、いとうせいこうさんの新作「想像ラジオ」にまつわる話です。 これは、2011年3月11日の東日本大震災とその周辺を描いた小説ですが、 記録的な価値のみならず、思想的な価値も大変に高い作品です。余談ですが私は中表紙の濃紺の深さが好きです。 …

肯定の人・1〜いとうせいこう「想像ラジオ」

ご無沙汰しております。 みなさまお元気ですか。私は元気です。最近は99岡村さんと同様に、「あまちゃん」を中心に生活が回っております*1。 ちょっと間が空きましたが、読みました。 想像ラジオ作者: いとうせいこう出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2…

多崎つくるくん・2 悪について

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前回の続きです。 モチーフである音楽や小説からも想起される、 豊饒で多岐的な「喩」の話、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。 どんな角度からも読み解けるストーリーには、繰り返し象徴としての「悪霊」が出てきます。 訳の分からない拒絶、…

多崎つくるくん・1 音楽と喩

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ミーハーなので、読みました。色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/04/12メディア: ハードカバー クリック: 3,074回この商品を含むブログ (334件) を見る 作中楽曲がまたも話題になりましたね。Li…

ふしぎなせかい「abさんご」

149回芥川賞受賞作品「abさんご」がえらい問題作だった。abさんご作者: 黒田夏子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/01/01メディア: ハードカバー購入: 9人 クリック: 912回この商品を含むブログ (41件) を見る ミーハー魂全開で読み始めたが、こんなに…

祝福と呪い その2 境界上の戦いと創造

前回は、「心の自由」について考えるうち、花粉症の起源を通じて「戦う細胞」として生まれた免疫細胞は、その機能から逃れられないことについて話した。 1対1のやり合いから戦争に至るまで、「戦い」の基本は異なるもののぶつかり合いであるが、根っこは結局…

祝福と呪い その1 花粉症の起源

ご無沙汰しております。しばしの留守と無精をお許し下さい。 ではしれっと始めます。 ………… 前回の連続記事、「本当のわたし」で、心の在処や「じぶんとは何か」という古代から人類に横たわる命題について考え、わりと具体的な結論に達した。 あれだけ書いて…

本当のわたし その4 わたしのすがた、わたしの身体

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その1では分人主義、 その2ではこころの在処について、 その3ではヒトのこころに心情と理性が生まれる過程について触れた。 いよいよ本題へ。 「分人主義」、 つまり「ヒトの心はコミュニケーションによってのみ作られている」というのは本当なのか。 それか…

本当のわたし その3 こころとあたまの所在地

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その1では、分人主義について、 その2では、その基になるこころの在処について触れた。 こころの在処である内臓の動きを、さらに詳しく。ヒトのからだ―生物史的考察作者: 三木成夫出版社/メーカー: うぶすな書院発売日: 1997/07メディア: 単行本 クリック: 6…

本当のわたし その2 こころのありか

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その1では、平野啓一郎さんが提唱する「分人主義」にふれた。 「分人」とは、自殺者や生きにくく苦しんでいる人への、新たなこころの捉え方だ。 さっとまとめると、 基本的に自我は、コミュニケーションによって形成される。 たとえば親、兄弟、友人…、もっ…

本当のわたし その1 「空白を満たしなさい」と「苦手だっていいじゃない」

年末に読んだ1冊が面白かった。空白を満たしなさい作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/11/27メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 17人 クリック: 600回この商品を含むブログ (64件) を見る Amazonでの紹介文。 世界各地で、死んだ人間…

西川美和のいびつな世界

いまさらですが、あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願い致します。 …………2013年1月11日、シアターキノで開催された「夢売るふたり」西川美和監督のトークショーに行った。 「夢売るふたり」上映と西川美和監督新春トークショー キノが上映し…

複雑であいまいな私 その3 すべての根、洗練と混沌

前々回は、同時に「ふたつの感情」を想起する、 伝統芸能である能の「面」と、現代のコントについて、 前回は、ドラマや映画の劇判音楽でも見受けられる同様の表現と、 複雑さは抑制や抽象へと転化しやすく、 それゆえに生々しい人間という存在を超越した能…

複雑であいまいな私 その2 ドラマ、劇判音楽

前回は、同時に「ふたつの感情」を想起する、 伝統芸能である能の「面」と、現代のコントについてはなした。 他にも、笑いと恐怖、喜びと悲しみなど 異なる感情を一度に提示しているものはとても多い。 わたしは、そのいくつかを思い出した。 昨年放映された…

複雑であいまいな私 その1 能とコント

心ひかれる研究を目にした。 名大と東大、「能面」が多様な表情に見えるのは「情動キメラ」が理由と解明 (2012年11月22日) 名古屋大学(名大)と東京大学は、古典芸能で使う「能面」が多様な表情を見る側に想起させるのは、 能面の各顔パーツが異なる情動を…

真ん中にあるもの その3 ベルガイシュの音楽

その1では日常の豊かさを享受するラボルト精神病院の人たちに、その2では、祝祭を通じ、それをさらに魅力的な形へ転化することについて触れた。 よく似たはなしが、ポルトガルにあった。 ポルトガル人の女性ピアニスト、マリア・ジョアン・ピリス*1は、1999…

真ん中にあるもの その2 ラボルトの祝祭

前回は、誰もが対等に暮らしている、ラボルト精神病院の日常についてはなしました。 映画の冒頭に戻ります。すべての些細な事柄 [DVD]出版社/メーカー: バップ発売日: 2008/08/27メディア: DVD購入: 3人 クリック: 26回この商品を含むブログ (16件) を見る …

真ん中にあるもの その1 ラボルト精神病院の日常

きっかけは、この記事だった。 INTERVIEW 「正常」とは何ですか? 伝説の精神病院「ラ・ボルド」で写真家・田村尚子が写した問いかけ WIRED.jp(写真は当該記事より引用、以下同様) フランスの精神病院、「ラボルト」を写真家の田村尚子さんが、6年に渡り取…

『夢売るふたり』がみていた夢

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2012年9月8日、西川美和監督・脚本の「夢売るふたり」が公開された。 「夢売るふたり」 公式サイト http://yumeuru.asmik-ace.co.jp/ 西川美和さんは、「ゆれる」「ディア・ドクター」など、一貫して「罪」に関する作品を生み出している。 ゆれる [DVD]出版…

なにものでもない人生(高貴さについて・3)

第1回では、伊丹さんの審美眼、第2回では、それを育んだであろう、彼の生い立ちに触れました。 糸井さんは、彼の人生に思いを巡らせ、こんな言葉を紡いでいます。 糸井「はー‥‥。とにかく、伊丹さんにはなんで、そんなに才能があったんだろうかと思うと、 な…

伊丹十三の沈黙、タモリの「中洲産業大学」(高貴さについて・2)

前回は、伊丹十三さんが「13の顔を持つ男」として多彩な力を発揮していた根には、 確かな審美眼をベースにした「高貴」さが備わっていた、ということを簡単にご紹介させていただきました。 その精神を育んだものとは何かを探している折に、こんな対談に出会…