静寂を待ちながら

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虚構とは(SMAPのこと)

信じられないほど、ご無沙汰しております。今年初の更新が、お盆明けになろうとは。無精を恥じます。
頻度は落ちても時々書かなきゃと、思ってはいるものの…、な現状です。まあ、細々のんびり、気長に続けていきます。

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さて、先週末(2016年8月14日)、信じられないニュースが飛び込んできました。

SMAPを応援してくださる皆様へ

http://www.johnnys-net.jp/page?id=text&dataId=1110

結成28年、デビュー25周年の記念イヤー初頭からゴタゴタがあり、結局今年で解散という形に。オリンピックや甲子園で湧く列島に大きなショックを与えました。
作家の朝井リョウさん曰く「SMAPはインフラ」。電気ガス水道スマップ、でしたっけ(あやふや)。それくらい国民に浸透し、なくてはならない存在であると。さすが戦後最年少直木賞作家、上手いこと言います。佐藤健に髪型を真似されただけのことはある。*1
趣味嗜好が多様化し、ジェネレーションギャップありまくりのこのご時世に、誰もが知る、ということの凄みたるや。こんなスター、もう二度と出ないのではないでしょうか。
すでに憶測やリークでさまざまな報道がされていますよね。戦犯探しというか。正直、本当のことは私には分かんないです。
ただ思うのが、「フィクションのあり方」*2について。
秀逸なコラムを拝見しました。以下、引用します。

ドキュメントバラエティの時代は、あの日終わった
角田陽一郎 「世界は全てバラエティである」cakes
https://cakes.mu/posts/13721 より

芸能人は今すごくバランスが難しい状況にあると思います。
スターとして、素の人間性を隠して、みんなの望む虚構を作り続けるのか。それとも、自分の素の部分をみんなに見せて楽しませるのか。はたまた、「自分の素はこうだよ」とさらけ出したふりをしつつ、そこに虚構を忍び込ませるのか。現実と虚構のパーセンテージの割合の再構成が求められているのです。
(中略)
それは社会の中で言えば、本音vs建前の割合です。
今たまたま時流に一番敏感なテレビや芸能界で顕著になっているだけで、これからいろんな社会の局面で僕等ひとりひとりが対峙する問題なのです。

動植物に『遊び』はあるが、虚構はない。虚構が必要なのは人類だけです。ヒトには感情と理性がある。人体の仕組みとして、内に湧く感情と、外的世界を受容し整理する理性、それぞれの出処は対立構造にあると言われています。それも単純なVS.ではなく、複雑に入り組んでいると。本音と建前が生まれるのはそんな訳で当たり前なのですが、厄介なのは、どちらにも、真実と嘘が入ってるということ。それがヒトというものです。

虚構。大好きな存在だ。わたくしの人生は虚構がなくては成り立ちません。音楽、文学、美術、お笑い、
映画ドラマ、アイドル、その他諸々に助けられまくってきました。人生を豊かに潤してくれたこれらには感謝しかない。勿論!SMAPも含まれております。
そして、これは完全な好みですが、虚構の中でも、昔から「豪快なファンタジー」に惹かれがちです。「空が地面にキスをしたら、夜が生まれた」的な、神統記っぽいやつに。
何が胸を打つかって、余白です。「なんで、空と地面を恋人に見立てたんだろう…」などと、作り手の心に想いを馳せたくなる。強い作品であるほど、想像力を掻き立ててくれるもんです。逆に言うと、ぜーんぶ説明してしまう作品には面白みがない。
受け手を信頼している作り手が、私はとても好きです。

余白って、きっと白鳥のバタ足とロマンでできてるんだと思う。

………
SMAPは、日本アイドル史の異端児でした。
男性アイドルの定番だったキラキラ・ヒラヒラの衣装を脱ぎ捨てて、若者向けファッション誌に掲載されるような普通の服を着た。コント番組を始めた。ラブソングだけでなく、「頑張りましょう」「Hey Hey おおきに毎度あり」といった、生活者応援ソングを歌った。憧れの王子様ではなく、クラスの人気者的な存在を演じてくれた。

今年随一の傑作ドラマ「ちかえもん」で、不幸糖売りの万吉が、近松門左衛門に対して最後に放った名台詞。

嘘のなにがあきまへんねん。嘘とほんまの境目がいちばんおもろいんやおまへんか。それを上手に物語にすんのんが、あんたの仕事でっしゃろ?

SMAPの余白は私たちを魅了した。虚構と現実を、巧みに織り交ぜた在り方。
それが、5人の生きた道です。


…………
事実は小説よりも奇なり。ただ、虚構しかできないことだってきっとある。そう私は信じています。

SMAPの5人、いや6人にはたくさん夢を見させてもらった。余談ですが、日本で一番ピアノの当て振りが上手いのは中居くんです。ドラマ「砂の器」第1話、チャイコフスキー・ピアノ協奏曲第1番の完璧な当て振りを私は決して忘れない。ああ、ダンスと演奏って似てるんだなって思った記憶。
メンバーにはお疲れさま、まずは心と体を休めてください、と言いたい。そして、出来ればこれから先、違う夢を見せてもらえたら、とも。25年という歳月を、アイドルとして駆け抜けてくれた5人が大好きだから。

虚構って何なのでしょうね。結論は簡単に出ないし、その時々で意見も変わりそう。ヘビーな命題ではありますが、これからもちょいちょい考えていきたい。

*1:映画「何者」の主役として役作りする際、原作者である朝井リョウ氏をモデルにしたのだそうです。

*2:by cero