静寂を待ちながら

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設楽統が見つけた居場所

2012年6月10日放送の「ボクらの時代」は、設楽統×若林正泰×星野源の3人による、「“品”のある男たち」でした。

お笑いナタリー「ボクらの時代」にバナナマン設楽、オードリー若林、星野源

http://natalie.mu/owarai/news/70799



「ボクらの時代」公式HP http://www.fujitv.co.jp/b_hp/jidai/index.html

番組冒頭で、設楽さんが語ったこと。

設楽「憧れてんだよ、俺は。常に、何かに。
(中略)


本当のことをいうと、俺、日村さんに憧れている部分あんのよね。
いや、バカにしている部分もいっぱいあるよ。


だけど、何が憧れているかっていうと、あの人は
『楽しい』とか『むかつく』とか、結構全面的に(出す)、そういう人間なのよ。出すのよ。


俺は、一回、こう、(胸を押さえて上半身を引く動作をして) 『ぎゅっ』とやっちゃうのよ。
で、引いたりしてから、『あっ』ってなんのね。
(中略)


『わーっ』ってなるとどんどん引いていくのよ。
なんか、やな奴なのよ。」

「ぎゅっとする」「一回引く」という心情を、日村さんは、親しい後輩である、バカリズムこと升野英知さんと似たものを感じるとして、
「盆地出身にありがちな性格、周りを敵か味方かで判断するタイプ。*1」だと、ユーモアを交え評しています。*2


全くの余談ですが、ウッチャンナンチャンの内村さんも盆地出身*3です。
盆地とは、ある種の芸人資質を育む地勢なのでしょうか。


設楽さん自身もそれに同調し、子どもの時、出身地域が田舎のため、クラスに見知った顔が少ないことが多かった、その影響は確かにある、と話しています。
新学期の始めは、端から級友を観察して様子をうかがい、人間関係などが分かってから、少しずつ地を出して自分なりのポジションを獲得していたとのこと。*4


さらに、バナナマンファンにはお馴染みの話が続きます。

設楽「学生時代とかも、何か『わーっ』ってなってんだけど、
『俺の居場所はここじゃない』見たいなのが
どっか、(胸を押さえて) ここの中にある。


スター選手みたいなのがいたら、
自分はそれになれないから、
要は、そうじゃない方法論で、何か、ちょっと目立ちたいとか、
多分、あったんだと思うよ。」

設楽さんが、思春期に感じていた「俺の居場所はここじゃない」という感情については、今まで、バナナムーンなど、ラジオの中では幾度となく語られてきました。

その時はだいたい、照れて話を中断するとか、
日村さんの「自分の居場所なんて、ここにしかないのにね」という、愛情あふれるフォローを予期しながら話しているような印象でした。


つまり、自我に目覚める青春期の感情を、あけすけに話すことへのためらいと、はじらいを含んでいたのです。


しかし今回は単独出演の折、しかも、地上波という場でこの話をされたことに、私は率直に言って驚きを禁じ得ませんでした。


おそらく、出演者の中で最も年長であり、回し役という立場上、若林さんや星野さんが話しやすくするという意味も込めて、自分の恥部を披露されたのだと思います。
そして年齢を重ね、こつこつと「魂が震えるような仕事」*5や経験をいくつも積み重ねたことから、
「青かった過去」を完全に受容するという心情へ至ったのかもしれません。




ただ、中学時代は野球部キャプテンで生徒会長、という、いわゆるヒーロー的なポジションにいた設楽さんが、そんな逡巡を抱えていたのは不思議な気がします。


普通に考えて、周囲から注目を集める位置にあったはずなのに、なお、己のエネルギーを発散できていないという不燃を感じていたのでしょうか。


設楽さんは、現在、コント師、バラエティ番組の中心的存在、MC、ひな壇での裏回しやコーナーの仕切り、そして朝の顔など、本当に多彩な場所で、八面六臂の活躍をされています。


私見ですが、そこに共通しているのは、「己を消して周りを生かす」という姿勢、という気がします。


今でこそ、「ドS設楽」というキャラクターが認知されていますが、基本的には自分の使命を「日村勇紀という存在を世に知らしめること」とし、コントや番組内で、自らを前面に押し出す行動はあまりとらないといった様相です。
また、「企画成立屋」として各バラエティ番組などで重宝がられているのも、自己主張が控えめで、番組のためを思った言動が多いからなのだと思います。


でも、どうしようもなく浮かび上がってくる設楽さんの面白さが、そこにはあります。
日村さんやオークラさんをはじめとする、「ちょっと変わった人たち」への愛情と憧れ、それを魅力的に伝える手腕、
「リトル殿」と呼ばれている、ドS、あるいはガキ大将的なふるまい、
そして、この番組でも語られている、知性と人柄が醸し出す「品」。


表現の仕方は、それぞれの場で異なりますが、彼の持つ面白さはどこへ行っても失われません。


矛盾した言い回しですが、自分を抑え「無私」を保つことで、設楽さんはお笑いの世界で、自分にとって心地のよい「居場所」をつかんだのでは、と勝手に思っています。


「無私」で得た、設楽統の居場所。
それは、きっと、今後もどんどん発展していくことでしょう。
いちファンとして、本当に楽しみにしています。

*1:TBSJUNK「バナナマンバナナムーンGOLD」2010年2月15日Podcastより

*2:設楽さんは埼玉県秩父群出身、升野さんは福岡県田川市出身

*3:内村さんは熊本県人吉市出身

*4:TBSJUNK「バナナマンバナナムーンGOLD」2011年4月22日Podcastより

*5:ノンストップ!』2012年4月23日放送時の、設楽さん発言より引用 http://www.fujitv.co.jp/nonstop/index.html