静寂を待ちながら

お笑い、テレビ、ラジオ、読書

「本のカフェ」に参加しました。

2014年1月26日、「本のカフェ」という読書会に参加させていただきました。
主宰の木村さんによる詳細解説はこちらです。

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どんな感じなのかな…と恐るおそる伺ったのですが、とてもあたたかな催しでした。好きな本について紹介したり、質問をしたりして語らう穏やかで熱いひととき。

紹介者は3人、自分も含めて聴き手は6人でした。まずお一人目の方。

やまなし (日本の童話名作選)

やまなし (日本の童話名作選)

異端の数ゼロ――数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

異端の数ゼロ――数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

素晴らしい振り幅ですよね。宮沢賢治が科学者でもあったことと無縁ではないように感じます。
「やまなし」は主に文章の速度の変化、登場人物である「かわせみ・梨・蟹」それぞれを表現するテンポ感について言及されていました。
「異端の数 ゼロ」は、「ゼロ」という数の誕生と受容・反発の歴史について。西洋ではやはり全ての概念の前にキリスト教が立ちはだかるのだな、と妙に納得しました。

お二人目はこちら。

快楽の館 (河出文庫 ロ 2-1)

快楽の館 (河出文庫 ロ 2-1)

覗くひと (講談社文芸文庫)

覗くひと (講談社文芸文庫)

迷路のなかで (講談社文芸文庫)

迷路のなかで (講談社文芸文庫)

アラン・ロブ・グリエはヌーヴォーロマン派の代表的作家で、映画監督でもあるそう。
去年マリエンバートで [Blu-ray]

去年マリエンバートで [Blu-ray]

↑こちらは脚本を担当しています。シンメトリーな映像美、反復される台詞、脈絡のないストーリーで織りなされる夢想のようなお話。
作風は「主観を排し、徹底的に客観(出来事)を描写」ということで、有機的なストーリーを楽しむというよりは就寝時の「夢」を思わせるような、断片を重ねていくという手法なのだそうです。モチーフの一部として絵画が用いられ、同じ台詞や描写が数ページごとに差し挟まれる「反復」が物語を牽引していく。それらは「永遠に開かれた問い」と言えるのでは、という紹介者さんの言葉が印象的でした。
三人目の方はこちら。
インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

ペソア詩集 (海外詩文庫)

ペソア詩集 (海外詩文庫)

ユリイカ2012年6月号 特集=アントニオ・タブッキ

ユリイカ2012年6月号 特集=アントニオ・タブッキ

アントニオ・タブッキウンベルト・エーコポストモダンの頃の作家だそう。「インド夜想曲」は失踪した友人を探すべく、インドをボンベイマドラス〜ゴア、と旅をしていくお話。
脳内空間を具現化したという意味での「都市」を駆け抜け、数々の被造物や多言語に身をゆだね…、という描写を読み進めるうちに、無意識は階層化されていく。一体誰を探しているのか、それは友人なのかそれとも自分なのか分からなくなり、「どこかを旅することは他人の無意識の中に入っていく」ことなのでは、という感覚にとらわれるそうです。ラテン文学特有の乾いた文体や、「最初の一行と最後の一行が抜けているような」構成も魅力的とのこと。
今ここにいる身体的存在としての自分、そしてこれまで連綿と続けてきた、人生とは旅だ、みたいな歴史的存在としての己、それが矛盾なく交わるというはどういうことなのか…、など、あれこれと考えされられました。


…………
私はばかみたいにうなずきながら皆さんの話を聞いていただけなのですが、それでも脳細胞が音を立てて嬉しそうに分裂していくみたいな、そういうすばらしい刺激をたくさんいただけて、とても幸福でした。そして自分自身も、もっと読まねば!書かねば!とふんどしのひもを締め直しました。


主宰の木村さん、鈴木さん、お会いできた皆さま、素敵なひとときを本当にありがとうございました。また機会があったならぜひ参加したいです。楽しかったー。