静寂を待ちながら

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おしゃべりジャズナイト

こんにちわ。9月ですね。最近は人の相談に乗るとか、各種祝い事を盛り上げるなどとなんだか周囲の黒子的な活動が多く、少々どたばたしておりました。自分自身は地味かつ淡々と生きているので、皆様の変化をうらやましくながめております。そして食欲の秋ということで、社交のたびにもりもりと季節の旨いものを飲み食いするのがまた楽しい。秋は飯も酒も進むよね。ああDEBUまっしぐら。この頃は鏡を見るのが怖いです。歩いたりストレッチしたりと運動もしてますが、それを上回る食事量なのでもう焼け石に水なのです。しばらくの間、おうちでは豆腐&キノコ生活決定だ。ここに「これ以上丸くならない」宣言をして退路を断ちたいと思います。うう、自信がない…。

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さてさて、すっかり遅くなってしまいましたが、先月末に「おしゃべりジャズナイト」というイベントに参加してきました!場所は「TO OV cafe」にて。参加者は7名、それに主催の木村さんを加えての計8名。それからTO OV cafeマスターの中村さんがジャズにものすごく詳しいということで、あれこれとお話や解説をしてくださいました。ジャズの会ということでしっとり落ち着いた、大人の空間という感じだったなあ。しかし皆さま、時折情熱がばーっとこぼれるのです。そういう、穏やかながらもふつふつと熱い!集まりでした。そうそう、「TO OV cafe」というロケーションも雰囲気づくりに一役買っていた気がする。アート展示やライブなども行われる、こちらのお店のカルチャーに敏い空気感がわたしたちの気持ちをほぐし、かつ高揚させてくれたのかもしれません。主催の木村さんの公式&詳細解説はこちらです。(プレイリスト付)

ではいざ本編へ。
まず、はじめに木村さんと中村さんからのご挨拶。中村さんの「ジャズといえば即興。つかみどころがない、なんていわれるがそれが芸術性、特に抽象アートとつながった面白さがある。そういうアドリブの妙を楽しんでほしい」という話が印象的だったなあ。クラシックやポップスはいわゆる「決め打ち」が基本で、アドリブはあっても装飾音とか、ごくわずかなことしか要求されません。大友良英さんが「あまちゃん」サントラ制作時に「クラシック畑の人にアドリブをお願いすると絶妙にださくなる。それが逆に『あまちゃん』っぽくってよかった」なんて冗談交じりに語っていましたが、首がもげるほどうなずきたい。アドリブと決め打ちの才能ってぜんぜん別物だと思う。もちろん共通項も多いけど、両方できる人をしぬほど尊敬する。わたしは決め打ちしかできないうえに、それすらもミス交じりであぶなっかしいので。
で、続いてはレジュメを使った木村さんによるレクチャー。大きく分けて2テーマあり、ひとつめは「『枯れ葉』の聴き比べ」でした。
最初に、原曲のイヴ・モンタンバージョンを聴いてからさまざまなスタイルの4曲を試聴。いろんな即興があるんだよー、という紹介です。以下、ジャズの素養がまったくない私の、ざっくりした感想です。

1 ビル・エヴァンス(p)「ポートレート・イン・ジャズ」:最初から芯だけ抜いて進んでいく感じ、崩し方は芸術性が高いような。
2 レッド・ガーランド・トリオ「ラストレコーディング2」:割とベタ、明快に変化していく。後半はリズムでもっていっている。
3 キャノンボール・アダレイほか「サムシン・エルス」:ミュートTpの音色が格好良い、掛け合いがおもしろい。
4 ビージー・アデール(p)「マイ・ピアノ・ジャーニー」 :イージーリスニングっぽい。リチャード・クレイダーマンを思い出す。

中村さんが「ビル・エヴァンスはずべての楽器が対等なアンサンブル。レッド・ガーランド・トリオはハードバップというジャンル、スクエアな感じ。キャノンボール・アダレイマイルス・デイビスのミュート・プレイは『卵の殻の上を歩いているよう』と形容されるほど繊細」などなど、解説を添えてくださいました。勉強になるわー。自分の無知っぷりを埋めるようにがりがりとメモを取りましたよ。

二つ目のテーマは「ジャズの歴史」です。発祥・バップ・クールと大くくりの3期を説明。ジャズと社会の密接な関係に触れながら、話は進められました。
南北戦争が終わって解放された奴隷…、もとい黒人とクレオール(白人と黒人のハーフ)がニューオリンズで暇をもてあまし、酒場で敗れた南軍が残していった楽器を弾いてたことからはじまったジャズ(発祥期)。禁酒法が発令されてからは闇酒場を仕切っていたアル・カポネの所在地シカゴへ拠点が移り、やがてNYへ。第二次世界大戦がスタートし、ビックバンドを抱えていた大きなダンスホールが軒並み閉まっていくと、奏者らはちいさなナイトクラブへ移動。それは「踊る」から「聴く」ジャズへの変化を生んだ。それが「バップ」というジャンルで、バド・パウエルなど天才奏者がシーンを牽引したそうだ(バップ期)。戦争が終わると、黒人寄りだったバップの揺り戻しからか、音楽はどんどん洗練され、曲調はコード(和声)主体からモード(旋法)主体へと変わっていく(クール期)*1。実際に白人のジャズメンも増加。映画産業の隆盛もそれを後押しした。これらはハリウッドで発展したため「ウエストコーストジャズ」と呼ばれるようになる。そして多様化の道へ…。
アメリカの歴史、特に大衆文化史とジャズはもうそのまんま、シンクロしているのですね。木村さんのレクチャー、すっごくおもしろかったです。

その後、中村さんが「初心者のために…」と資料を使いながらジャズを楽しむための基礎知識について説明。楽器の略称や、CDジャケットの演奏者クレジットの読み方、それから膨大なスタンダードナンバーについてなどなど。曲ごとに編成が違う場合はここを見るのだよ、とかスタンダードに、演奏者がつくったのとティンパンアレーで作られた流行歌の2種類があるんだよー、とか。あとは「耳を鍛えるには、まずベース音を聴き取ること」「4,5枚の愛聴盤をもち、すべての楽器音が分かるまで聴き込め」など、ジャズをより深く楽しむための指南をさまざまな角度から話してくださいました。中村さん、口調はやわらかいものの、もう情熱がすごい。こちらがひとつ聞いたら100返ってくるみたいな知識量は圧巻でした。できれば朝まで聞いていたかったです。

その後のフリータイムではアルコールを交えつつ、の方も。お二人の熱が伝播したのか、参加者のみなさまそれぞれの「はまりジャンル」について語る、なんて場面もありましたよ。ええ、私はもちろん飲みました。酒のないジャズ話なんて!

主催の木村さん、マスター中村さん、楽しい企画と素敵なお話をありがとうございました。大満足でした。またこういう機会があればぜひ伺いたいです。その時は皆さま、仲良くしてくださいね。

*1:クール期前半については、中村さんの解説より引用。