静寂を待ちながら

お笑い、テレビ、ラジオ、読書

第8回本のカフェ

こんにちは。今月はヒマ月間!テレビ見てラジオ聴いて、本読みまくるぞ!とわくわくしていたら、各方面から予定が埋まり、全然暇じゃなくなってしまいました。手帳を眺めてはしょんぼりため息をついている今日この頃であります。お盆まで突っ走るしかなさそうだ。でも、わたくし、忙しいときのほうがちゃんとしてるタイプなので、これでよいのかもれません。そうはいっても遊びたい。ので、8月はヒマ月間を何としても死守したいと思います。もし何かたのまれても、苦笑しながら逃げますので!どうぞよろしくお願いいたします。

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さて、ものすごーく遅くなってしまいましたが、先週、第8回本のカフェへ参加させていただきました!場所はサッポロ珈琲館大谷地店、地元を代表する街の本屋さん・くすみ書房さんの隣です。主宰の木村さんによる詳細レポはこちら。参加されたのは紹介者さんが3名、聞き手が主宰・司会の木村さんを含めて9名の計12名でした。今回は皆さん気さくで明るくて、大変に良い空気だったという気がします。年齢層はかなり幅広かったかな。なごやかながらも、いろんな意見や感想の飛び交う闊達な空気が、とっても居心地良かったです。ちなみに自己紹介タイムでは、木村さんの提案で、「学生時代に好きだった科目」をそれぞれ披露。やっぱり国語が最も多かったです。あとは世界史、美術、生物、古文、英語、高校数学、心理学、フランス語、倫理(哲学)などなど。こう見ると結構バラエティに富んでいますね。どうでもよい情報だとは思いますが、わたしは倫理(哲学)でした。高校で出会ったとき、世の中にはこんなに面白い学問があったのかと興奮し、やらなくていいところまで勉強したものです。あと、中田英寿さんの影響もあったかも。うーん、ミーハーですね。

では、初めの紹介本はこちら。

精神科医和田秀樹さんによる自己啓発書。タイトルが全てを表現していますが、人は誰かと接する際、理性よりも感情、その人が「魅力的であるかどうか」を判断基準にしがちなんだよ、ということを分かりやすく解説しているそう。ざっくりいうと「好きになれるか」ってことですよね。相手のことを素敵だなあ、って思う気持ちは、確かに何ものにも勝るという気がします。自分のことを鑑みても、この人のためなら何か尽くそうとか、多少の無理も聞いちゃおうとか、っていう思いのベースは「魅せられ度」によるかもなあ。また、紹介者さんは「『喜怒哀楽』のうち、人間関係においては『哀』は必要ないのでは」という著者の主張を紹介されました。まあ、悲しみとか、負の感情をぶつけられるのはちょっと困る…ってのはよく分かる。日常的な人間関係にはあんまり反映しない方がよいのが「哀」なのかもしれません。文学やアート、音楽、あるいは宗教や思想などなどの領域になるのかな。でも、個人的には、そういうものを直接的に他者へはぶつけずとも、忘れることなく、自分の中でしっかりと熟成させたいな、なんて思います。暗いですね。でも、悲しみを知っている人が好きなんです。

次はこちら。

バイ貝

バイ貝

いわずと知れた芥川賞作家・町田康さんの作品。「働いて溜まった鬱を散ずるために」、ホームセンターで鎌やらなんやらの買い物をする、というただそれだけの話が、町田さんにかかると笑いと悲哀のにじむ面白小説になるのですね。すごいな…。紹介者さんは、冒頭で引用されたドストエフスキーの言葉「貨幣は鋳造された自由である」*1という「マクラ」に触れつつも、そのまま真面目になど進まない町田文学に魅せられたとのこと。「繰り返される『鬱』という言葉や、韻を踏む文体」に終始くすくすしながら読み進めた、と話されていました。「鬱」って何回も出てくると、気分が暗くなりそうだものだけど、あんまり出てきすぎると逆に面白くなってくるのかも。笑いの基本はリピート、「天丼」って言いますものね。音楽出身の「町田町蔵」さんらしい、言葉の「音」を意識した表現と言えそうです。「まるで新作落語を聞くみたいな」と評されていたのが印象的でした。個人的には、「いくら物を買っても鬱は散ずるどころか増える」という主人公のしょうもなさも、笑いへつながっているのかな、という気がしました。働いてストレスためて買い物してまた働いて…、輪の中を駆ける鼠みたいな。おかしいけども耳の痛い話です。

最後はこちら。

藻類30億年の自然史―藻類からみる生物進化・地球・環境

藻類30億年の自然史―藻類からみる生物進化・地球・環境

藻類について分かりやすく解説した一般書。紹介者さんはパワポをつかいながら、藻類、それから他の生物の進化や生態系について熱く説明してくださいました。生物の知識などほとんどない自分にもよく分かる、素晴らしいプレゼンでした。系統樹を見ながら、「動物はたったこれだけ」とか、「ここ以外は全部単細胞生物」など、ていねいに地球上の生命体の分類を説明して下さって、それがまたうまくて、わたしはすごく引き込まれました。それから、光合成するのに動けるという、動植物の両方を具有した藻類のすばらしさと、彼らから吐きだされた酸素が現在の地球環境のベース(オゾン層とか)を作ったのだ、という生命史についてもあれこれと語ってくださいましたよ。また、藻類が葉緑体を体内に取り込み、共生をはじめたのは「場に適応するための戦略」だったではないか、とのこと。そうやって生き延びる種もいれば、逆に適応できすに滅びる種もいるけど、その差ってなんなんだろう。偶然なのか必然なのか、どっちなのかしら、って尋ねてみたら、まさにそれが紹介者さんの研究にもかかわることだったらしくて、「私は…」などと興味深い意見を教えてくださいましたよ。あと、藻類の「美しさ」も魅力的なのだそう。「単細胞生物なのに、こんな形をしているなんて…」とさまざまな写真を提示。いやあ、面白かった。普段あまり触れる機会のない世界ですが、紹介者さんの膨大な熱量と知性溢れる語り口にすっかり魅了されました。*2

ひと通り終わった後は、お隣のくすみ書房さんの2階へ移動。入口のところの「中学生はこれを読め!」「君たちを守りたい」などの棚や、奥の「なぜだ?!売れない文庫フェア」などを久住社長みずからがご案内して下さったのです。何という贅沢。これらの本棚をしつらえた経緯や展開のあれこれについて語ってくださいました。本当に本が好きなのだなあ、という社長の愛ある口調が印象的でしたよね…。思いは伝播し、みなそれぞれの棚へと引き込まれていきました。わたしも文学から絵本まであちこち見回り、結構買い込んでしまいましたよ。カフェへ戻った後は飲み食いしつつ、参加者さんのおひとりが作られているガラス作品を拝見するなど、充実した時間を過ごせました。

相変わらず楽しく知的なひとときを過ごさせて下さる「本のカフェ」主宰の木村さんには感謝しきりです。またずうずうしくうろちょろするわたくしに温かく接して下さる皆様にも厚く御礼申し上げます。次回次々回も決まっているそうですよ。全体的にムーミンですね。北国の可愛い妖精をみなで愛でましょう!

*1:出典は「死の家の記録」らしいです。

*2:余談ですが藻には文学的なイメージもあり、「詩藻」「詞藻」という言葉もあるらしい。知れば知るほど面白い世界だ。