静寂を待ちながら

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第4回本のカフェに参加しました!

こんにちわ。GWを引きずったまま週末を迎えております。BGMはもちろん斉藤和義さんの「社会生活不適合者」です。

さて、もう一週間も前になっちゃいましたが、第4回「本のカフェ」に参加させていただきました。今回はオブザーバーで、ちょっとだけお手伝いも。主催の木村さんの詳細レポはこちらです。

「お前は人の話を記録するばっかりかよ…」的なブログになりかけていますが、お気楽マイペースの、続けることに意義がある的なスタンスでがんばりたいと思います。以下、ちょっと長めです。
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今回の会場は、市内では有名なカフェ「森彦」の系列店、「プランテーション」の3階にあるイベントスペース「GRENIER」でした。フランス語で≪屋根裏≫の意味だそうです。
そこはふるい倉庫を改築して作られたカフェでした。市街からすこし離れた駅に降り、徐々に緑が増えていく道を10分ほど歩いたところにあります。入口に置かれたオレンジの外国車を横目で見て、薄灯のカフェを抜け、板だけの不安定な階段を上っていくと、おおきなガラス窓がぐるりの≪屋根裏≫に。それは別世界でした。三角天井から幾本ものポールがぶら下がり、その先には白い布にくるまれた裸電球。まるで逆さのてるてる坊主が浮いてるみたいな。その下には、しろいペンキがさっと塗られた三枚板のテーブルが4つ、ロの字型に組まれていました。参加者はその周りに座ります。「ロ」のなかの中央の空間には低い、立方体の台があって、大きさも形も異なる7つの石がストーンサークルのように配されていました。各テーブルにもぽつぽつと、あるいはごろりと石。
もう、ここから物語がはじまらなければうそだろ、とか思いましたよ。空間プロデュースはこちらのオーナーであり、デザイナーの市川草介さんの手によるものだそうです。*1本当に素敵でした。誤解を恐れずに言うと、場所自体はおばちゃんが車座になってイモの剪定をしてても違和感なさそうですが、彼の一手間ですっかり雰囲気のある空間に…。プロってすごいです。うっとりしすぎて「7つの石」の写真を撮るのを忘れたのが悔やまれます。木村さんごめんなさい。


前置きが長くなってしまいましたが、いざ本編へ。参加者15名のうち、紹介者は5人でした。ひとりめの紹介本はこちら。

一千一秒物語 (新潮文庫)

一千一秒物語 (新潮文庫)

稲垣足穂さんの20代前半の作品。夜、月、星などの「断片をあつめ、その組み合わせを試しているような」「いらないものを削ぎ落としたような」つくりだそう。後から見せていただいたのですが、同性愛者の美学に満ちた、夢想的なのに生々しさを匂わせるフレーズがたくさんありました。それから紹介者さんは、似た言葉を少しずつずらしながら反復する、という表現方法の巧みさにも言及。そうそう、「言い換え」を続けるのって難しいんですよね…。ぶんぶん頷きながら聞いてました。精緻で幻想的な装丁も素敵だった。
次はこちら。
Helmut Newton

Helmut Newton

女性のヌードをアーティスティックに映し出した写真集。もうこれがでかかった…。初めは限定1万部で出版された、重さ30Kgにも及ぶ巨大なものだったらしいです。今回拝見したのはサイズを小さくした普及版とのことですが、それでも43.2x30.5x10.2cmですよ。購入するともれなく台座が付いてくるとのこと。また、ページをめくる時によいしょ、と言いたくなるようなところがタイトルの「sumo」に繋がるのだそうな。四股を踏める体力がなくてはこの本は読めないということか!そういうことか!…冗談はさておき、作品はどれもモード誌のグラビアみたいな、堂々たる女性の美という感じでした。素人目で恐縮ですが、光や影の具合がとても格好良かったです。
続いてはこちら。
ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

いわずと知れた山田詠美さんの青春文学。紹介者さんも高校生の時に読まれたそうです。初読のときは、「全ての人に丸をつけたい」という主人公・時田くんのフラットであろうとする姿勢や、世間一般から見たらマイナスに取られがちな部分こそがその人の「核」になる、などの考えに共感した。しかし、大人になってから読んだら、また違う見方が生まれてきたとのこと。「裁く『大人』に対して反抗していた彼自身が、実は大人を裁いている」とか、「苦手な人をしりぞけず、その現実を受け止めて生きることの尊さ」に気がついた、と。「読んだ時期によって感想が変わる」のって、読書の醍醐味ですよね。
4冊めはこちら。
ブリキの音符

ブリキの音符

片山令子さんの詩に、ささめやゆきさんが絵をつけた作品です。紹介者さんは辛い折に「人を傷つけない」詩や音楽に救われた経験があるそう。他にもたくさんの関連書籍を紹介してくださいました(詳しくは木村さんのエントリからどうぞ!)。片山さんは、一貫して「人間はひとりだ」と語っています。そうだな、「孤独」こそが人生だよな、なんて考えつつ聞いてました。あと、個人的には、詩・音楽を支える韻律やリズムの根源は心音(広くは拍動でもいいけど)だと思っています。共有出来ないけどみんなが持っているもの。吉本隆明さんは「韻とは『指示表出』、コミュニケーションを支える部分だ」とおっしゃってましたが、ある意味では「己との対話」を促すものなのかもしれませんね。
最後はこちら。
新宿、わたしの解放区

新宿、わたしの解放区

「おみっちゃん」ことカメラマン・佐々木美智子さんの半生を描いたノンフィクション。ただ、カメラマンと言い切ることがはばかられるほど、彼女の人生は波乱万丈です。尋常ではないパワーを持った女性という印象を受けました。兄を亡くした戦争体験、結婚と離婚、「カメラが私のゲバ棒みたいなものだった」学生紛争時代、ブラジルへの移住など、一部を挙げるだけでも10人分くらいの人生体験…。また、多くの文士や有名人とのエピソードもちりばめられており、昭和文化史的な側面もあるらしい。聞いているだけで大興奮でした。


……………
一通り紹介が終わると、初企画「アートルーム」がはじまりました。有志が持ち寄った、さまざまなものを愛でるおしゃべりタイム。写真や詩集、翻訳作品、アート作品、展示のお知らせ、などなどの紹介がそこかしこで繰り広げられました。今回は人数が多かったこともあって、会話は多岐に。アート、文学、そして科学に至るまで!人の話を聞くのがだいすきな私にとってはもう天国でした。しかしながら、わたくし、ひとつ謝らなくてはならないことがあります。楽しすぎて徐々に調子に乗った結果、最終的には「冠婚葬祭の集いでおせっかいを振りまく親戚のおばちゃん」と化してしまいました。うざくて本当にすいませんでした。反省しています。


こういう、文化的でひらかれた空間を作ってくださるのは、やはり主催の木村さんのお人柄とセンスによるものだと思います。毎回感謝しきりです。
今回お会いした皆さま、本当にありがとうございました!またあおうね!

*1:彼の興味深いインタビューがこちらに。