静寂を待ちながら

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いたずらなジャルジャル

先日、ジャルジャルの単独ライブ『ジャルっ10じゃねぇよ!』へ行ってきました。




ジャルジャル・コンビ結成10年目で初の全国ツアー!!「ジャルっ10じゃねぇよ!」(7/1〜7/29)


http://yoshimotonews.laff.jp/mailmag/2012/04/10-d0ad.html

まだ、ツアーのまっただ中ですので、感想のみに留めます。



結成10年目にして、大小の紆余曲折がありつつも、売れっ子街道をひた走るジャルジャル



彼らの織りなすネタは、「いたずらっ子」と称したくなるような、茶目っ気とユーモアに満ちています。
その代表的なものは、キングオブコントでも披露された、


鮨屋の大将と見習いが、雑談の遊びの中で、同じ語尾のループにはまってしまう「しりとり」
小学生が中年女性を、「おばはん」のひと言でいじり続ける「オバハン」


などが挙げられるでしょう。



ジャルジャルの特徴は、
子どものような純粋でいて残酷な視点、それを俯瞰で的確にとらえる知性、繊細な構成、
でもそれを匂わせずに力技すら悠々と取り込む表現力、
に、貫かれていると思います。



また、二人の根底に流れている、彼らのどうしようもない育ちの良さも、コントや表現力に大きな影響を与えているように感じました。



バナナマンの設楽さんも、よく「品のよさ」の大切さを説いています*1
ここでいう「育ち」とは、実際の家柄とは関係なく、思いやりや気遣いなど、心根に内在する優しさ、慈愛の豊かさ、というようなことです。
後藤さんにも、福徳さんにも、それらがしっかり備わっていると思いました。



『ジャルっ10じゃねぇよ!』では、2時間の中で、12本ものコントを披露しています。
ステージ上は、「この中のどれかが、今年のKOCで見られるのだろうか」と思わされるような、てらいのない野心で溢れていました。
それらはとても清々しく、若者らしい熱っぽさとひたむきさがありました。



また、オープニングや幕間VTR、エンディングも凝っていて、彼らのアイデアや世界観が存分に伝わりました。




にもかかわらず、不思議と
ジャルジャルは、まだまだこれからのコンビだ。さらに羽ばたいていくだろう」
という期待をも、感じさせてくれたのです。




これは、完全に私感なのですが、彼らは、ロングコントでも魅力を発揮すると確信しています。
今回は、幕間も含めて、10分以内の作品の連続で構成されていました。
それらはすべて隙なく面白かったのですが、
「長いコントも観たい、彼らの陽気でふざけた世界を時間をかけて堪能したい」という感情を想起させられました。



また、いち素人の至らない思いですが、彼らの笑い、言葉、その向こうにある「沈黙」に存在するであろう、
負の感情やどろりとした考え、さらに言うなら「品のない」部分なども、
もっともっと出して欲しいな、と感じました。



ジャルジャルは、時に、「真顔で嘘をつく」「本心を見抜くのが難しい」などと揶揄されることがあります。
「人間はいつでも巨大な劇場にいるようなもの*2」というような、周りを突き放して見つつ楽しむ姿勢は、彼らの笑いを支える屋台骨です。



しかしながら、彼らの本性にある育ちの良さが、その奥にある何かに鍵をかけているような気がします。
もちろん、掘り下げ方の妙は充分なのです、なのに、
「まだ、隠し持っている」「これからもっと、面白くなるに違いない」という、可能性が感じられるのです。




それを、人は「才能」と呼ぶのかもしれません。




いずれにしても、面白いなあ、素晴らしいなあ、というだけではなく、未来への萌芽も提示するとは、末恐ろしいことです。



観に行ってよかったなあ、と心から思う単独ライブでした。
もし、迷っている方があれば、足を向けて欲しいと願っています。


また、itunesでコントを配信するという、新しい試みもしておられるようです。こちらも、是非。

ジャルジャルの戯 2 [DVD]

ジャルジャルの戯 2 [DVD]

*1:バナナ炎DVD第7巻「世間は気づいていないが『バナナマンのココを評価して欲しい』ベスト3」、あるいは拙文

*2:よしもとばなな 「スイート ヒアアフター」P.69 より