静寂を待ちながら

お笑い、テレビ、ラジオ、読書

又吉直樹が刻む Irreguler Beat

綾部さんについてさんざん触れたので、今度は又吉さんのことを少しだけ。



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最近テレビやメディアでよく目にする芸人の中でも、異彩を放っている又吉直樹(31)。



ひな壇でガヤをいれたり、MCとして場を回したりするような器用さを売りにする人が多い中、大喜利などで培った発想力や、豊富な読書量に支えられた知性で、独特のポジションを築きつつある。



「芸は間だ」とよく言われるが、彼のテンポは、若手芸人、あるいは全ての芸人の中でも遅い方だろう。
空白を恐れて相方の綾部さんがトークをしている間に、悠々と考えをまとめてぼそりと発言をし、笑いをさらっていく。



また、スポーツも得意で小学校からサッカーを始め、高校は大阪の強豪校・北陽へ進学。
同窓生にはJリーガーになったり、指導者としてサッカーに携わっていたりする方も多いそうだ。



さぞや運動神経や、サッカーの才能があったのだろうと思うが、彼自身はその経緯を、方々でこんなふうに語っている。

僕、サッカー始めたときはめちゃくちゃ下手で、同級生の中でも一番出来なかった方なんです。
リズム感が悪くって、才能ないって言われてて。



でも、どうしても上手になりたくって一生懸命練習したんです。
うちは裕福じゃなかったから、皮のボールじゃなくてゴムボールを使って、早めにグラウンドへ行って。



そうするうちに、だんだんと上達してきて。
最初は駄目だって言われていたリズム感も、「相手が合わせにくい、独特のテンポを持っている」って褒められるようになったんです。

スポーツもリズム感が大切だ。
元々は「悪い」と切り捨てられた部分を努力で昇華し、武器にまでするというのは並大抵ではない。




ふと、疑問に思う。
又吉さんの「リズム感」とは、一体どのようなものなのだろう。



それを知る一つの手掛かりに「目線」がある。



人には、それぞれ得意な「身体感覚」があると言われている。



物事を、視覚で考える人。
聴覚で考える人、
そして、触覚で考える人だ。*1



例えば「昨日の夜、何を食べた?」というような簡単な質問をしたとき、




視覚タイプは上を向く。
聴覚タイプは目を左右に振る。
触覚タイプは、下を向くか、目をふせる。



それぞれの反応速度も違う。
もっとも反応が早いのは視覚タイプ、続いて聴覚、触覚となる。


これを踏まえて、次の画像を見てほしい。


(ピース×よしログ 2011.5.15 より)


お薦めの本を問われた後、又吉さんの目線は左右に振れている。
これは典型的な「聴覚タイプ」だ。



しかし、こちらを見ると、また違う。


(ピース×よしログ 2011.6.12 より)



綾部さんは、お店の場所を思い出すときに上を向いて考えているので、視覚タイプだろう。
しかし又吉さんは上を向いたり、左右に振ったりと、目の動きが一貫しない。



他にも様々な動画を観たのだが、他の人に比べて、又吉さんの目の動きは随分と多い。どのタイプかを見抜くのに苦労した。



ここで、私は一つの仮説を立てた。





又吉さんは、無意識的・もしくは意図的にバリエーション豊かに五感を使っているのではないだろうか。





基本的には、聴覚が発達したタイプであり、音や耳を使ったコミュニケーションや思考を得意とする。
しかし、視覚、触覚も生来の感覚と同じくらいに活用している。



笑いを考えるときに、「もっと面白いものにしたい」と思い、貪欲に、多角的に考える癖が付いているのか。
あるいは、「気にし過ぎ」と評される性質から、「これでよいのだろうか」と温めている時間が長いのか。



多分、その両方だろうと、私は推測する。



それで、彼の刻むリズムは一貫せず、「相手を欺く」独特のものになっているのだろう。



又吉直樹が刻むイレギュラー・ビートは、今日も多くの人を魅了している。