静寂を待ちながら

お笑い、テレビ、ラジオ、読書

高橋一生の本棚

2017年8月4日、NHKにて放送の「あさイチプレミアムトーク」、ゲストの高橋一生さんが、自宅の本棚を紹介。

あまりに魅力的かつ強烈だったので、一冊ずつ確認してみました。

以下、30冊以上あります。
分かったものだけで恐縮ですが、どうぞお納めくださいませ。

スペクテイター〈19号〉Whole Pacific Northwest Life Catalog vol.1

スペクテイター〈19号〉Whole Pacific Northwest Life Catalog vol.1

宇宙の地図

宇宙の地図

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叫ベマタヨシ(又吉直樹「火花」が試みた実験)

こんにちは。毎日寒いですね。こちらは相変わらずのしがない日々です。

先日、Eテレ「オイコノミア」で、経済学者の大竹先生が、「又吉さん、今『火花』の売上はどれくらいか知っていますか…?」と電卓を叩き、ご本人とゲストの西加奈子さんに見せていました。あまりの数字に、二人とも絶句。
…野次馬根性から、あたしもつい、電卓アプリを開いてしまいました。そしてそりゃ絶句だ、と納得。

ネット配信でのドラマ化準備も、着々と進んでいるようですね。

又吉直樹『火花』がドラマ化、キャストに林遣都、浪岡一喜、門脇麦(2015.10.19)

CINRA.NET より)

外野の動きも眺めつつ、「火花」の解説もどきの続きを、のんびり書いていきます。
今日はここ。

文学としての価値
*撰択と転換の巧みさ/「急に感情を爆発させる」*1

『VOGUE』インタビューより。

又吉
「それまでは丁寧にやっていたのに、急に叫びだして感情を爆発させるようなものって、音楽では多いけれど小説にはあまりない。
お笑いでも音楽でもそういうものが個人的にも好きなので、実践してみました。」

又吉直樹が、新境地・小説『火花』で試してみたこと。

この作品内で、それが最も顕著なのはこちら。
先輩・神谷が、同棲していた彼女・真樹の部屋を出て行く場面のあとの、回想シーンだ。

*1:5月に行ったトークイベントレジュメより

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『本のbar(本のカフェ第23回番外編)@札幌』のご報告

こんばんは。もうすっかり秋ですね。あと3ヶ月で今年も終わります。何という…。

さて、すっかり遅くなってしまいましたが、先日開催した「本のbar(本のカフェ第23回番外編)@札幌」のご報告を。
2015年9月19日、「本のBar」を開催いたしました。

作家の木村洋平さんが、もう20回以上も開催されている読書会「本のカフェ」の番外編。
今回は夜に、お酒と食事を交えつつ、好きな本について語ろう、という主旨。酒好きにはたまらない企画です。本と酒場、ということで、飲んべえのあたくしにお鉢が回ってきて、僭越ながら主宰をさせていただきました。ありがたいことです。
参加者は、紹介者が13名、見学が6名、そして私、で全部で20名。もう皆さま、素晴らしかったです。
語学(英語、ドイツ語、ロシア語)の愛好家やプロ、美術関係者・アーティスト、音楽関係者、文筆関係者、また多くの読書会に参加されている本好きや、カルチャーに精通する方など、本当に教養の深い方々ばかりでした。お陰さまで、とても質の高い集まりになったと自負しております。オラなんか、「みんなすげえっす」とか言って、飲んだくれるしか芸がなく、申し訳なかったっすよ…。

また、今回は「Elia」円山本店を貸し切っての開催でした。色々と無理を言いましたのに、快く引き受けてくださった、ソムリエの菅原明洋さんには、心から感謝しています。
菅原さんの料理がまた絶品!ズッキーニのやつとパスタ、ものすごーく美味しかったです。もちろん、ワインやその他のお酒も、最高のものばかりでした。ウイスキー、美味しかったな…。

下記、ご紹介くださった本たちです。(一人で数冊紹介された方もおりました)
今回は紹介者は一人5分程度で、簡単に紹介をするという形式。

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小説と、なにか(販促としての小説)

こんばんは。めっきり秋ですね。天も地も、獰猛なこの頃です。大過ない日常の偉大さを思い知ります。
わたしは最近、公私ともにべらぼうにドタバタです。まあ、そんな中でも本を読んで音楽聴いて、「ゴッドタン」観ればだいたい復活できるので、根が単純なんでしょう。阿呆に生んでくれてお母さんありがとう。

…………

さてさて、最近やたら「販促としての小説」を目にするので、まとめてみました。

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又吉直樹とボイン(「火花」の美を支えるもの)

こんにちは。扇情的なタイトルですみません。わざとです。

5月23日の『又吉直樹「火花」ブックトークイベント 於 くすみ書房2F「BookBird」』*1から早3か月。
その間に三島賞次点、「アメトーーク≪読書芸人≫」でお勧めした本がバカ売れ(中村文則「教団X」その他の増刷)、芥川賞受賞、TBS「情熱大陸」出演、火花」大増刷、選評掲載の「文藝春秋」が100万部超え…、などなど、いろんなことがありました。出版界は又吉さんを中心ににわかに活気づいています。そういえば、株価を動かしたというニュースもありましたね。もはや社会現象です。
しかし、ファンにとっては尋常ならざる時間でもありました。あまりのことに、わたくし、一時は体調を崩しました。その節、ご迷惑をおかけした皆様、本当に申し訳ありませんでした(土下座)。

余談ですが、基本的に、今の出版業界の問題は構造不況にあるので、このブームがひと段落したらまた「売れない」の合唱が始まるのは目に見えています。そこんとこを省いて今回のブームだけ語ってもしょうがないだろ、と思う。
ただ、文学は永遠に不滅なので、形を変えて生き延びるはず。必ず。

文学とは何か。小説が好きで、エンタメより純文学と呼ばれるもの、また古典を敬愛する私は、よく考えます。
表現される場所の問題ではなく、一番は「作家性」。作り手の信念や人生が刻み込まれているかどうか。そして、その媒体にふさわしい身体性が入っているかどうか。この2点が重要だと考えます。
何をさておいても、「身を削って」は基本。時事や流行は後からついてくるものです。吉本隆明さんはそれぞれを「自己表出」「指示表出」と言い、芸術は前者のほうが大事だと語っていました。
そして、文章なら韻律、音楽ならフレーズや和声、絵画では色彩、またその全てにおける構成、にその人の生理や身体性が入っていることが肝要。ここが、美を生むんですよね(映像についても触れたかったのですが、あまりに無知なのでやめておきます)。
小説、漫画、アニメ、映画、絵、写真、彫刻、演劇、舞踏、などなど、媒体は関係ない。指示表出によらず、自己表出に命かけてるのが芸術で、私はそういうものに魅力を感じるのです。

さて、話を戻します。
トークイベントでお話したことに後日談を加えながら、解説もどきを書いてみることにしました。
今日はこちらです。(イベントで使用したレジュメより抜粋*2

文学としての価値
*文壇の評価「最高の処女作である」
*リズム・韻律の試み(情景描写)/自由律俳句のエッセンス(大喜利・一発ギャグ)

参考にしたのは芥川賞の選評、親交ある方々からの寄稿など。(2015.8.16現在)

文學界 2015年 09 月号 [雑誌]

文學界 2015年 09 月号 [雑誌]

また、三島賞の論考やその他の解説を参照し、「火花」が評価された点を大きく二つあげます。

*1:詳細はこちら

*2:全部読みたい方はこちらからご覧ください

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『とても個人的な谷川俊太郎展』『外山光男アニメーション展「夏なのに」』、そしてにっき。

こんばんわ。暑いですね。私は完全なる夏バテです。楽しそうなことに目を光らせつつも、体力が続かずに不義理をしてしまうこともしばしば。「筋肉が自慢の頼れる兄貴化計画」には程遠い、へなちょこっぷりが悲しいです。

そんな中、何とかうかがえた素敵な展示のことなどをさらりと。

…………

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吉本隆明全集刊行によせて

こんにちは。
本日は吉本隆明さんの命日です。あれからもう2年が経つのですね。あのときは本当に、自分でも驚くくらいに動揺した。ただのファンにすぎないのに。身内が亡くなったときみたいに、いやある意味ではそれ以上に辛かったです。彼の思想や発言をどれだけ頼りにしていたのか、そしてどれだけ救われていたのかを痛切に感じました。

本日のエントリは、基本的に冷静さを失っております。だって、わたくしが人類史上、最も尊敬する人が吉本さんだから。ちなみに「存命」に限定すると、タモリさんが現在の第1位です。

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